AI検索で「後発でも入り込める業界」と「無理な業界」の見分け方|言及シェアの集中度と変動幅で読む5業界の実データ【2026年9月】
AIO/GEO対策の難易度は業界ごとに大きく違います。債務整理・転職エージェント・AGA・クラウド会計・ホテル予約の公開実データを「首位倍率(集中度)」と「30日変動幅(流動性)」の2軸で比較し、自社カテゴリがどのタイプかを判定して打ち手を決める手順を解説します。
「ChatGPTに聞いても自社が出てこない。何とかしたい」——AIO/GEO対策の相談は、ほぼこの一文から始まります。しかしその先の打ち手は、業界によってまったく変わります。数ポイント積み上げれば順位が動く業界もあれば、1社が回答をほぼ独占していて、同じ努力ではびくともしない業界もあるからです。
やみくもにコンテンツを増やす前に確かめるべきなのは、自社カテゴリの「構造」です。本記事では、AI回答の言及シェアを毎日計測している公開データを使い、5つの業界の構造を2つの軸で比較します。そのうえで、自社の業界がどのタイプかを判定して打ち手を選ぶ手順まで落とし込みます。
業界構造は「集中度」と「流動性」の2軸で見る
言及シェアの一覧を眺めていても、業界間の比較はできません。ブランド数が違えば数字の意味が変わるからです。そこで、どの業界にも適用できる2つの指標に変換します。
- 首位倍率(集中度)=1位のシェア ÷ 2位のシェア。1位がどれだけ抜けているかを、ブランド数に左右されずに測れます。2.0倍を超えたら「独占的」と判断してよいラインです
- 30日変動幅(流動性)=直近30日で、いずれかのブランドが動いた最大のポイント数。これが大きいほど、外部要因や施策でシェアが動く余地があります
この2軸を掛け合わせると、「入り込む隙があるか」と「動かせるか」が同時に判断できます。集中度が低く、変動幅が大きい業界ほど、後発でも短期間で露出を取りに行けます。
実データ:5業界を同じ物差しで並べる
以下は、ChatGPT・Claude・Geminiの3モデルに毎日クエリを送って集計された公開データです。ホテル予約のみ2026年8月31日時点(24データポイント)、それ以外は2026年9月1日時点(直近30日・27データポイント)の数値です。
| 業界 | 1位ブランド/シェア | 2位シェア | 首位倍率 | 30日の最大変動 | タイプ |
|---|---|---|---|---|---|
| 債務整理 | 杉山事務所 51.6% | 11.6% | 4.4倍 | −19.4pt | 独占・流動 |
| 転職エージェント | リクルートエージェント 35.3% | 24.9% | 1.4倍 | −19.7pt | 拮抗・流動 |
| AGA・薄毛治療 | AGAスキンクリニック 41.9% | 32.4% | 1.3倍 | +15.2pt | 拮抗・流動 |
| クラウド会計 | freee 41.0% | 30.2% | 1.4倍 | −8.0pt | 拮抗・中庸 |
| ホテル予約 | Booking.com 25.7% | 22.6% | 1.1倍 | +2.8pt | 拮抗・安定 |
首位シェアだけを見ると「債務整理51.6%とAGA41.9%は似たようなもの」に見えます。しかし首位倍率で見ると4.4倍と1.3倍で、まったく別の世界です。AGAは2位が32.4%で肉薄しており、10ポイント動けば1位が入れ替わる。債務整理は2位が11.6%しかなく、40ポイントの差を埋める必要があります。同じ「1位を狙う」でも、必要な投資額が一桁違います。
タイプ別の読み解きと打ち手
独占・流動型(例:債務整理)
債務整理は極端です。債務整理カテゴリの公開ランキングを見ると、杉山事務所が全体51.6%、ChatGPT単体では88.9%を占めています。ChatGPTに「債務整理 おすすめ」と聞けば、ほぼ確実にこの1社が返ってくる状態です。
一方で、30日間の推移は75%→55.6%と19.4ポイント下落しています。独占しているように見えて、実は足元が安定していない。この組み合わせは、1位ブランドにとっては警戒すべきサインであり、後発にとっては数少ないチャンスの窓です。
打ち手としては、正面から総合キーワードで戦うのは非効率です。上位のシェアが揺れているタイミングで、「特定の債務額」「特定の地域」といった絞られた文脈のクエリを取りに行くほうが現実的です。総合クエリでの逆転は、広告や指名検索を含めた別次元の投資が必要になります。
拮抗・流動型(例:転職エージェント、AGA)
最も施策のリターンが大きいのがこのタイプです。転職エージェントでは、リクルートエージェントが52%→32.3%と19.7ポイント下げる一方、JACリクルートメントが13.5%→26.1%と12.6ポイント上げ、マイナビエージェントも6.5ポイント伸ばしています。1か月で2位が実質的に入れ替わる流動性があります。
AGAも同様で、湘南美容クリニックが22.2%→37.4%と15.2ポイント上昇し、1位のAGAスキンクリニック(44%)に迫っています。逆にDクリニックは12.7%→0%へ落ち、30日でAI回答からほぼ姿を消しました。
このタイプでは、施策と数値の因果を追いやすいのが利点です。逆に言えば、放置していると自社も同じ速度で落ちます。月次ではなく週次で確認し、施策のリリース日を数値の推移と同じ表に記録する運用が必須です。何が効いて何が効かなかったかを、実際に検証できる唯一のタイプでもあります。
拮抗・安定型(例:ホテル予約)
ホテル予約は、Booking.com 25.7%、Expedia 22.6%、agoda 18.0%、楽天トラベル13.5%、じゃらん13.0%、一休7.2%と、6ブランドがなだらかに分布しています。30日間の変動も最大2.8ポイント(Expedia)で、ほとんど動いていません。
ここでの読み方は逆説的です。順位を上げるのは難しいが、下位でも一定の露出は確保できている。じゃらんは全体13.0%ですが、Geminiでは17.0%でagoda(16.7%)を上回っています。つまりこのタイプでは、全体順位を追うよりモデル別・クエリ別に自社が強い領域を特定して、そこを守るほうが投資対効果が高くなります。
安定型で短期的な変化を期待して予算を投じると、成果が出ないまま「AIO対策は効果がない」という誤った結論に至りがちです。最初にタイプを判定しておく価値は、ここにあります。
拮抗・中庸型(例:クラウド会計)
freee 41.0%、マネーフォワード30.2%、弥生会計28.8%。30日ではfreeeが8ポイント下げ、マネーフォワードが7.5ポイント上げています。動きはあるが激しくはない、という中間状態です。
このタイプで注目すべきはモデル別の内訳です。ChatGPTではfreee 33.8%・弥生会計33.3%・マネーフォワード32.9%と、上位3社の差が1ポイント以内。一方Claudeではfreeeが50.5%と大きく抜けています。全体平均だけを見て「freeeが強い」と結論づけると、ChatGPT上では実質互角である事実を見落とします。
ブランド数が少ないカテゴリの数字は割り引いて読む
ここまでの比較には注意点があります。債務整理とクラウド会計は計測対象が3ブランドしかありません。母集団が小さければ、各社のシェアは自動的に高く出ます。クラウド会計の上位3社合計が100%になるのは、市場を独占しているからではなく、3社しか測っていないからです。
実務では、次の2点を必ず確認してください。
- 計測対象ブランド数:自社が計測対象に含まれていなければ、シェアは当然0%です。「AIに出てこない」のではなく「測っていない」だけ、という取り違えは頻繁に起きます
- クエリの粒度:総合的な「おすすめは?」だけで測ると、必然的に大手が有利になります。自社の強い文脈を含むクエリを計測対象に加えないと、実力を過小評価することになります
「Claude 0%」をどう解釈するか
債務整理のデータでは、Claudeでの言及シェアが全ブランド0%になっています。これには2つの可能性があります。
- 計測の欠測:APIエラーやレート制限でその期間のデータが取れなかった
- モデルの回答方針:Claudeは債務整理のような法律・金銭が絡む領域で、具体的な事業者名を挙げることを避けている
後者であれば、それ自体が重要な発見です。そもそも特定モデルが固有名を出さない領域では、そのモデル向けのAIO対策は成立しません。予算を投じる前に、自社カテゴリで各モデルが実名を挙げるのかどうかを確認すべきです。
ちなみにAGAや美容医療のように、同じく規制の強い領域でもClaudeは具体的なクリニック名を挙げています(AGAスキンクリニック48.1%など)。「センシティブだから出ない」と一括りにはできず、カテゴリ単位で実測するしかありません。
自社業界のタイプを判定する手順
- 自社カテゴリの言及シェア一覧を取得する:3モデル分、直近30日の平均で
- 首位倍率を計算する:1位シェア ÷ 2位シェア。2.0倍超なら独占型
- 30日変動幅を確認する:いずれかのブランドが10ポイント以上動いていれば流動型
- 自社の順位と、1つ上のブランドとの差を測る:差が5ポイント以内なら現実的な射程内
- モデル別に分解する:全体平均で負けていても、特定モデルで勝っている可能性がある
- 計測対象ブランド数とクエリを確認する:母集団が小さければ数値を割り引く
1〜3のステップは、56業界・252ブランドの公開ランキングで無料で確認できます。データは毎日6:00 JSTに更新され、業界別ページではモデルごとの内訳と30日推移まで公開されています。時系列での動きを業界横断で見比べたい場合は業界別トレンドページが使いやすいはずです。自社カテゴリが掲載されていれば、判定作業自体は30分もかかりません。
計測ツールの選択肢
公開ランキングに自社カテゴリがない場合や、自社独自のクエリで継続計測したい場合は、ツールの導入が現実的な選択肢になります。国内で比較対象になるのは主に次の2つです。
| 項目 | ミエルカGEO | AIOPulse |
|---|---|---|
| 提供元 | Faber Company | Marketing Cloud Lab |
| 料金 | 月額49,800円〜+初期費用 | 月額19,800円/サイト(税抜・5キーワード込)、追加5,000円/KW |
| 言及シェア計測 | 月5万円〜のオプション | 基本料金に含む |
| 対応LLM | ChatGPT・Gemini | ChatGPT・Gemini・Claude |
| AI Overviews引用追跡 | 対応 | 非対応 |
| AI経由のCV分析 | 対応 | 非対応 |
| 導入 | 商談・問い合わせが必要 | Web申込のセルフサーブ(無料期間なし・申込時に初月分を課金) |
Google AI Overviewsへの引用状況やAI経由のコンバージョンまで追いたい、伴走支援が欲しいという場合は前者。本記事のようにClaudeを含む3モデルの内訳を日次で押さえたい、まず小さく試したいという場合は後者、という選び分けになります。機能と料金の詳細な突き合わせは両ツールの比較ページにまとまっています。
※本記事で参照した実データの出典であるAIOPulseは、当サイトの運営元であるMarketing Cloud Labが開発・提供するツールです。比較の公平性のため競合ツールも併記していますが、この点をご承知おきください。詳しくは運営者情報および広告掲載方針をご確認ください。
よくある質問
Q. 首位倍率が2.0倍を超える独占型の業界では、AIO対策をやる意味がないのでしょうか?
総合キーワードでの1位獲得は現実的でない、というだけです。債務整理の例のように、独占型でも上位のシェアは月単位で大きく動きます。総合クエリを諦め、地域・条件・悩みの具体性で絞ったクエリに計測対象を移せば、十分に戦える領域が見つかります。
Q. 30日変動幅が大きい業界は、施策の効果とただのノイズをどう区別すればいいですか?
単日値ではなく7日移動平均で見て、「2週間連続で5ポイント以上動いたら要因を調べる」といった判定ルールを事前に決めておくのが実務的です。加えて、施策のリリース日を数値の推移と同じ表に記録しておかないと、後から因果を検証できません。
Q. 自社の業界が公開ランキングに載っていない場合はどうすればいいですか?
タイプ判定の考え方自体は、自前で測っても同じように使えます。まず主要競合5社をリストアップし、想定される検索クエリを5パターン用意して、3モデルに手動で聞いて記録するところから始められます。継続が必要になった時点でツール導入を検討すれば十分です。
Q. 業界タイプは変わりますか?
変わります。転職エージェントのように1か月で20ポイント近く動く業界は、半年後には別の構造になっている可能性があります。四半期に一度は首位倍率と変動幅を計算し直し、打ち手の前提が崩れていないかを確認してください。