ChatGPT・Gemini・Claudeは同じ質問に違うブランドを推薦する|AI言及シェアの正しい読み方と計測設計【2026年8月実データ】
「AIに聞いたら競合が出た」を1つの数字で判断すると施策を誤ります。CRM・カードローン業界の公開実データをLLM別に分解し、モデルによる推薦ブランドの違い、集計期間による順位の入れ替わり、欠測データの扱いまで、言及シェアを読み違えないための計測設計を解説します。
「ChatGPTに聞いたら競合しか出てこなかった」——この一言から施策を決めてしまうと、かなりの確率で見当違いの打ち手になります。理由は単純で、ChatGPT・Gemini・Claudeは同じ質問に対して別々のブランドを推薦するからです。1つのモデルに1回聞いた結果は、全体像の3分の1どころか、その日のブレを含んだ点でしかありません。
本記事では、公開されている実データを使って「LLMごとにどれだけ答えが違うのか」を具体的な数字で確認し、そのうえで言及シェアを読み違えないための計測設計を整理します。AIO対策そのものの入門はAIO対策の基礎解説に譲り、ここでは「測り方・読み方」に絞ります。
同じ質問でも、モデルが変われば1位が変わる
まずCRM/SFA業界の公開ランキングの実データを見てください。以下は2026年8月11日時点、3つのLLMに毎日クエリを送って集計された言及シェアです(直近21データポイント)。
| ブランド | 全体平均 | ChatGPT | Claude | Gemini |
|---|---|---|---|---|
| Salesforce | 39.3% | 32.6% | 28.3% | 56.9% |
| HubSpot | 29.0% | 31.6% | 31.1% | 24.3% |
| Zoho CRM | 25.2% | 32.1% | 28.3% | 15.3% |
| kintone | 6.5% | 3.6% | 12.4% | 3.5% |
全体平均だけを見れば「Salesforceの一強、HubSpotが2位」という、業界人の直感どおりの結論になります。しかしモデル別に分解すると景色が変わります。
- Geminiでは Salesforce が56.9%と過半数を占めるのに対し、Claudeでは28.3%まで落ち、HubSpot(31.1%)に1位を譲っています。同じブランドでモデル間の差が28.6ポイントあります
- ChatGPTでは上位3社が32.6%・32.1%・31.6%とほぼ横並び。1位と3位の差は1ポイントしかなく、実質的に「団子状態」です
- kintoneはClaudeでのみ12.4%と、他モデル(3.6%・3.5%)の3倍以上のシェアを取っています
もしkintoneの担当者がGeminiだけで自社名を検索して「AIに全然出てこない」と判断したら、実際にはClaude経由で最も戦えている事実を見落とすことになります。逆にSalesforceの担当者がGeminiだけを見ていれば、Claudeで首位を明け渡している状況に気づけません。
なぜモデルによってここまで差が出るのか
主な要因は3つです。
1. 参照している情報源が違う
各モデルは学習データの構成が異なるうえ、Web検索を併用するかどうか、どの検索インデックスを使うかも違います。Geminiは自社の検索基盤との連携が強く、検索で強いブランドが回答にも反映されやすい傾向があります。
2. 回答スタイルの違い
「無難な定番を1つ挙げる」モデルと、「用途別に複数を併記する」モデルでは、シェアの分布そのものが変わります。上位が団子になりやすいモデルと、1位に集中しやすいモデルがあるということです。
3. 学習データの新しさ
モデルの知識のカットオフ時期が違えば、新興ブランドの扱いも変わります。比較的新しいサービスほど、モデル間のばらつきが大きく出ます。
重要なのは、この差がノイズではなく構造的な差だという点です。毎日測り続けても縮まりません。だからこそ「3モデルの平均値だけ」を見る運用は情報を捨てすぎです。
業界によって「モデル間のばらつき」の大きさが違う
すべての業界でモデル差が大きいわけではありません。同じ手法で計測されたカードローン業界(2026年8月11日時点)を見てください。
| ブランド | 全体平均 | ChatGPT | Claude | Gemini |
|---|---|---|---|---|
| プロミス | 31.3% | 30.5% | 32.1% | 31.1% |
| アコム | 30.5% | 30.9% | 32.1% | 28.4% |
| アイフル | 21.2% | 26.2% | 22.0% | 15.5% |
| SMBCモビット | 9.0% | — | — | — |
| レイク | 8.0% | — | — | — |
上位2社はどのモデルでも28〜32%台に収まり、順位もほぼ動きません。CRMとは対照的にモデル間で見解が一致している業界です。一方で3位のアイフルはChatGPT 26.2%に対しGemini 15.5%と10.7ポイントの開きがあり、順位が安定するのは上位2社だけだと分かります。
ここから実務的な指標が1つ導けます。「モデル間の最大値−最小値」を自社ブランドについて計算しておくことです。この幅が小さければ、どのモデルで測っても現実を反映していると考えてよい。幅が大きければ、平均値は判断材料として弱く、モデル別に施策を分ける必要があります。
「いつの、どの集計窓の数字か」で順位は入れ替わる
もう1つ、実務で必ず踏む落とし穴があります。同じカードローンというカテゴリでも、参照するページによって数字が違うのです。
| 参照元 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 業界別ページ(2026-08-11時点・8日間の平均) | プロミス 31.3% | アコム 30.5% | アイフル 21.2% |
| ランキング一覧ページ(最終更新 2026-08-13) | アコム 37.7% | プロミス 37.2% | アイフル 13.2% |
1位と2位が入れ替わり、3位のアイフルは21.2%と13.2%で8ポイントの差があります。どちらかが間違っているわけではなく、集計している時点と期間が違うだけです。短い窓で切れば直近の変動をそのまま拾い、長い窓で平均すればならされます。
そのため、社内資料やレポートに数値を引用するときは、必ず次の2点をセットで記録してください。これを怠ると、先月の数字と今月の数字を比べているつもりで、実は「単日値と平均値」を比べているという事故が起きます。
- 時点:いつ取得したデータか(AI検索の数値は日単位で動きます)
- 集計窓:単日か、7日平均か、30日平均か
施策の効果測定では、単日値ではなく7日移動平均を基本に据えるのが無難です。そのうえで「2週間連続で移動平均が5ポイント以上動いたら要因を調べる」といった判定ルールを事前に決めておくと、日々の上下に振り回されずに済みます。
見落とされがちな「欠測データ」の扱い
AI検索の自動計測では、APIの障害やレート制限で特定の日のデータが取れないことが日常的に起こります。ここの処理方法で数値は簡単に歪みます。
実際、先ほどのカードローンのデータには次の注記が添えられています。「集計期間8日のうち3日は一部のAIの取得に失敗しています(Claude 3日)。失敗した日は0%として数えず、平均から除外しています」。
取得失敗日を0%として平均に含めてしまうと、全ブランドのシェアが実態より低く出ます。8日中3日が0%扱いなら、数値は本来の6割程度まで沈みます。これを知らずに前月比を出せば、「AIでの露出が急減した」という誤った結論に直行します。
ツールを検討する際は、欠測日の扱いが明示されているかを必ず確認してください。注記なしにきれいな数字だけが並ぶツールより、こうした但し書きを表に出すツールのほうが、データとしては信頼できます。
実務向け・言及シェア計測の設計チェックリスト
- 3モデルすべてを測る:ChatGPT単独の結果を全体の代表として扱わない
- モデル別に分解して保存する:平均値だけを残すと、後から差分を分析できません
- プロンプトは1キーワードあたり5パターン程度:「おすすめは?」「初心者向けは?」「安いのは?」など聞き方を変える
- 頻度は日次:週次だとモデル更新のタイミングを取り逃します
- 評価は7日移動平均:単日値で一喜一憂しない
- 判定ルールを事前に決める:何ポイント・何日続いたら「変化」とみなすかを先に決めておく
- 欠測日を記録する:0%換算せず、除外して母数を調整する
- 施策のリリース日を同じ表に書き込む:数値の変化と打ち手を突き合わせられる状態にする
モデル差を打ち手に変える
モデル別に分解できると、施策の優先順位が具体的になります。
- Geminiでのシェアが低い:検索エンジンとの連携が強いため、従来のSEOと構造化データの整備が効きやすい領域です
- ChatGPT・Claudeでのシェアが低い:比較記事・レビューサイト・業界メディアといった第三者ソースでの記載量が効きます。自社サイトの改修より優先度が高いケースが多くあります
- 全モデルで低い:そもそも認知の問題です。計測より先に、Web上に自社を含む比較コンテンツが存在するかを確認してください
自社の業界がどのタイプかは、公開されている56業界・291ブランドのAI検索ランキングで確認できます。データは毎日6:00 JSTに更新され、各業界の代表的なクエリ467件以上を3つのLLMに自動送信して集計されています。業界別ページではモデルごとの内訳まで無料で確認できるので、まず自社カテゴリのばらつきの大きさを見てみてください。
計測ツールの選択肢
3モデル × 5プロンプト × 日次を手作業で回すのは現実的ではありません。国内で選択肢になるのは主に次の2つです。
| 項目 | ミエルカGEO | AIOPulse |
|---|---|---|
| 提供元 | Faber Company | Marketing Cloud Lab |
| 料金 | 月額49,800円〜+初期費用 | 月額19,800円(税抜・1サイト5キーワード込)/6キーワード目から1キーワード5,000円・初期費用なし |
| 対応LLM | ChatGPT・Gemini | ChatGPT・Gemini・Claude |
| AI Overviews追跡 | 対応 | 非対応 |
| 導入 | 商談・問い合わせが必要 | Web申込のセルフサーブ(無料期間なし・申込時に初月分を課金) |
| 競合分析の軸 | 業界内のSEO軸 | ジョブ理論による業界横断 |
Google AI Overviewsへの引用状況まで一括で見たい、レポーティングや伴走支援が欲しいなら前者。Claudeを含む3モデルの内訳を日次で押さえたい、まず小さく試したいなら後者、という選び分けになります。機能差の詳細は両ツールの比較ページにまとまっています。
※本記事で参照した実データの出典であるAIOPulseは、当サイトの運営元であるMarketing Cloud Labが開発・提供するツールです。比較の公平性のため競合ツールも併記していますが、この点をご承知おきください。詳しくは運営者情報および広告掲載方針をご確認ください。
よくある質問
Q. 3モデルのうち1つだけ測るなら、どれを選ぶべきですか?
自社の顧客層が最も使っているモデルを選ぶのが原則です。判断材料がなければChatGPTから始めるのが無難ですが、上のCRMの例のようにChatGPTは上位が団子になりやすく、順位変動を検知しにくい面があります。予算が許すなら最初から3モデル測ることをおすすめします。
Q. モデル間の差が大きい場合、どの数字を社内KPIにすべきですか?
3モデルの平均を主KPIに置きつつ、モデル別の内訳をサブ指標として併記するのが実務的です。平均だけだと施策の当たり外れが打ち消し合って見えなくなります。
Q. なぜ日次で測る必要があるのですか。月1回では不十分ですか?
月1回だと、観測した日がたまたま外れ値だった場合に検証できません。本記事の例のように、同じカテゴリでも集計時点が2日ずれるだけで1位が入れ替わることがあります。日次で取っておけば、後から任意の期間で平均を取り直せます。
Q. シェアが0%だった場合、何から手をつけるべきですか?
自社サイトの改修ではなく、Web上に「自社が含まれる比較・ランキング記事」が存在するかの確認からです。LLMは既存の比較コンテンツの構造を流用して回答を組み立てる傾向が強く、どこにも載っていないブランドは候補にすら上がりません。
まとめ
AI検索の言及シェアは、1つの数字として扱うと必ず読み違えます。押さえるべきは次の3点です。
- モデル間の差は構造的:CRM業界ではSalesforceがGemini 56.9%・Claude 28.3%と28.6ポイント違い、1位のブランド自体が入れ替わります
- 集計窓と時点を必ず併記する:同じカテゴリでも切り方次第で順位も数値も変わります
- 欠測日の処理を確認する:0%換算されていれば、シェアは実態より低く出ます
そのうえで、日次・モデル別・7日移動平均という3点セットで記録を残せば、施策と数値の因果関係を追える状態になります。まずは自社の主力キーワード1つで、3モデルそれぞれが誰を推薦しているかを確認するところから始めてください。